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同郷のレジェンドが語る!
注目若手ライダー

全日本ロードレースの未来を担う注目の若手ライダー、Honda CBR1000RR-Rを駆りMuSASHi RT HARC-PRO. Hondaから参戦する水野涼と、YAMAHA YZF-R1でYAMAHA FACTORY RACING TEAMから参戦する野左根航汰。
絶対王者たる中須賀克行に挑むこの2人の若者を、世界を知るレジェンドはどう見ているのか。群馬県出身の水野涼を同郷の青木宣篤氏が、千葉県出身の野左根航汰を同じく同郷の中野真矢氏が、ずばり語り尽くす!

青木宣篤氏が語る、
水野涼という選手

水野涼という選手

2015年 J-GP2のチャンピオンを獲得

伸び上がっていくライダーの名前は、レース業界内で何かしら聞こえてくるものです。水野選手の名前はかなり早い段階──彼が榛名モータースポーツランドでミニバイクレースを戦っていた頃──から知ってました。「速い子がいるぞ」と評判だったんです。評判どおり、しっかりと速さを伸ばしながら全日本まで上がってきた時は「おお、やっぱり来たか!」とうれしかったんですよ(笑)。2015年にJ-GP3でチャンピオンを獲った時も「おお!」と思いましたが(笑)、彼のことを強く認識したのは、やはりJ-GP2のチャンピオンを獲得した2017年ですね。7戦中5勝は素晴らしい成績でした。「本当に速いライダーになったぞ」と頼もしく思ったものです。勢いのいい若者が全日本トップの座を争う位置まで来てくれたのは、とても心強いですよね。

2019年の飛躍

昨年夏以降はファクトリースペックのマシンを操り目覚ましい活躍

「絶対王者」中須賀克行選手を追い落とす勢いを見せてくれたのが、2019年のJSB1000でした。「いよいよ若者が王者を倒す瞬間が見られるか!?」とワクワクしましたね。彼がグッと伸びたのは、やはり鈴鹿8耐前後でしょう。ファクトリー仕様のCBR1000RR SP2を得て、一気に伸びましたね。「速いマシンで速くなる」って当たり前のことのように思われるかもしれませんが、そう簡単なものではありません。マシンは道具。そしてレーシングライダーはどれだけその道具の能力を引き出せるかが勝負です。いくら速いマシンを手に入れたからと言っても、その限界にライダーが追いつき、追い越さなければムダになってしまいます。水野選手には、ファクトリーマシンを使い切るだけの能力があった。そしてファクトリーマシンにビビらないだけの、いい意味での「図太さ」があった。そういうメンタルの強さも、チャンピオンの条件です。

水野涼の強み

武器はブレーキング

水野選手のライディングを見ていると、ガッツを感じるんです。意気込み、勢い、モチベーションといったポジティブさが、彼の走りにはあふれてますよね! 頑張りが分かりやすいのもイイことだと思います(笑)。特にブレーキングを武器としているようなので、その長所をどんどん伸ばしてほしいと思います。そして水野選手には高い適応能力があります。先ほども言ったように、ファクトリーマシンを得ても伸びるライダー、伸びないライダーの差がある。水野選手は間違いなく前者。マシンが速くなればなるほど、ライダーとしても強くなれるタイプですね。今年はひときわパフォーマンスアップした新型CBR1000RR Rを手にするわけですから、いっそう楽しみですね。

水野涼の弱み

課題はもてぎの最終セクター

鈴鹿サーキットでの印象ですが、リズムで走るコース前半の東コースが少し苦手なのかな、と思います。ツインリンクもてぎで換算すると(笑)、セカンドアンダーブリッジからビクトリーコーナーまでの間がカギではないでしょうか。ここはライダー自身が積極的にリズムを作る必要があるセクション。特にキモとなるのは精細かつ丁寧なアクセルワークです。JSBマシンは高度なトラクションコントロールシステムが搭載されていますが、それでもやはり勝負を分けるのはライダーの右手の操作。水野選手は、特にスロットルを閉じる動作に少しだけ粗さが見られます。高橋巧選手との差もそこにありました。スロットル開度10%前後でジワジワと開け閉めするという細かい動作の精度がもっと上がれば、よりリズミカルに走れるようになるはずです。

こうすれば水野はもっと強くなる

ていねいさを手に入れられるか

昨年までHRCでJSB1000を走っていた高橋巧選手との比較になってしまいますが……。高橋選手は電子制御(トラクションコントロール)が介入する領域までバチッとアクセルを開けていました。ブレーキング、そしてコーナリングからのアクセルオープンなので、当然マシンは深く寝ています。度胸も必要ですが、もっと必要なのは「ていねいさ」。ゆっくりとアクセルを開ける、という意味ではなく、素早く、なおかつていねいに。イメージとしては「フワッと制御に当てる」アクセルワークが大切です。というのは、電子制御も万能ではなく、いつでもどこでも最適に効いてくれるわけじゃない。制御が思い通りにならない時に頼りになるのは、結局自分の右手だけです。水野選手はすでにアクセルをバチ開けする度胸の持ち主なので、あともう1歩のていねいさを意識すれば走りに磨きがかかると思います。

新型CBRを水野はどう仕上げられるか

水野が駆る新型CBR1000RR-R(写真は市販モデル)

新型CBR1000RR-Rは間違いなく速い。水野選手にとっては心強い武器になるでしょう。でも、新しいマシンになるとエンジンに苦労するかもしれません。今のエンジンはトラクションコントロールのみならず、基本特性も電気的に制御されています。JSB1000は世界的に見てもエンジン開発の制限が少なく、セッティング幅も非常に広いカテゴリーです。きめ細かくリクエストができてしまう分、迷路にもハマりがち。やれることが多くなる一方で、残念ながらファクトリー体制ではなくなってしまうのがまた難しいところですね。まずは過渡特性や加速性能といったエンジンパフォーマンスのベースをどれだけ自分好みにできるか、が勝負でしょう。

もてぎ大会、ズバリ水野が勝つには

今大会で水野の初勝利を見られるか

最優先課題は、新型CBR1000RR-Rをいち早くものにすること。いくらエンジンパワーがあっても、勝てるかどうかはまた別です。しっかりとパワーを路面に伝えられるようなセットアップを見つけることが重要だと思います。でも、パワーがあることはひとまず大きなアドバンテージ。目下倒すべき相手は中須賀克行選手になると思いますが、パワーを生かして中須賀選手の前に出て、どれだけ背中を見せつけられるかがカギになるでしょう。レースでは通常、後ろにつけている方が有利と言われますが、パワーに絶対の自信があれば、あえて先行することでライバルたちの焦りを呼ぶ作戦も有効です。そうやって自分のペースに持ち込めれば、勝機は十分にあると思いますよ。何しろホンダの若きエースですからね。プレッシャーをプラスの力に変えて、日本のレース界を引っ張ってほしい!

コラム:青木宣篤氏
1971年、群馬県生まれ。
1997年のロードレース世界選手権GP500クラスでルーキーオブザイヤーを獲得。
現在はスズキのMotoGP™マシン開発を手がけながら2輪を世の中に広める活動を行うレジェンドライダー。

中野真矢氏が語る、
野左根航汰という選手

野左根航汰という選手

JSBライダーのなかでもヒジを擦る深いバンク角

チームノリックジュニアに加入した時から名前は知っていました。その後、特に強く意識したのは野左根選手が全日本J-GP2クラスに参戦し始めた頃。「新人類きたな」と思いましたよ(笑)。それまで日本人ライダーにはいないタイプだったので……。MotoGP™のトレンドであるヒジ擦りをいち早く採り入れて、ごく自然に自分のものにしてたのが野左根選手だったんです。より深くマシンを寝かせて、より短い時間で向きを変えられる走りを追求した結果、ヒジを擦るスタイルになったわけですが、無理なくできちゃっているのが本当にスゴイことだと思いました。あのフォームは上半身をイン側に大きく入れ込む分、下半身ホールドがしっかりできていなければなりません。体力が必要ですし、もちろん視界も大きく変わる。簡単なことじゃないんです。ホント、「今までにないタイプのライダーが登場したぞ!」と驚かされました。

野左根にとっての中須賀克行という存在

身近にして最大のライバル、中須賀克行とのバトルが今年も見られる

世間では師弟関係とも言われていますが、たぶん師弟と思ってないんじゃないかな(笑)。それぐらいの根性がないとレーシングライダーなんてやってられないし、勝つこともできません。ただ、野左根選手から見れば、中須賀克行選手は間違いなく高く分厚い壁になっていますよね。同じマシンで戦うチームメイトは、身近にして最大のライバルですから……。全日本で勝つために必要な要素のうち、半分ぐらいは「若さと勢い」。残りの半分は経験値です。中須賀選手は2000〜2004年まで5シーズンを全日本GP250を戦い、JSB1000も2005年から16シーズン目になります。チャンピオンも9回と圧倒的な経験値を誇るライダーです。野左根選手が倒す相手としては最強に手強いライダーですが(笑)、目の前にいいお手本がいる、とも言える。強い心で思いっ切り立ち向かってほしいと思います。

野左根の強み

2017年にスポットでMotoGP™マシンを駆った経験は大きなアドバンテージ

うまく言葉では言い表せないんですが、野左根選手には独特な雰囲気があります。スター性という意味では、師匠だったノリックによく似た華やかさがあります。これって実はレーシングライダーにとって重要な素質だと思う。彼にはそれが最初から備わってますね。ライディング面で言えば、独特なフォームからも分かるようにバンク角が人並み以上に深く、マシンの倒し込みも素早い。これは武器でしょうね。さらに重要なのは彼はMotoGP™マシン・ヤマハYZR-M1をテストしていたり、ワイルドカード参戦の経験もあるということ。より速いマシンでの経験は、間違いなくプラスになります。日本の若手でMotoGP™マシンに乗れるライダーはそう多くありませんから、大きなアドバンテージです。

野左根の弱み

課題はさらに繊細なマシンコントロール

身近にして最強のライバル、中須賀選手のライディングは時にかなり大胆なように見えますが、実はものすごく繊細です。速いライダーほど操作は繊細なものですし、決勝で勝つにはその微妙なマシンコントロールを続けなければなりません。ちょっとの差ですが、それが勝負を分けるものなんです。予選では素晴らしい速さを見せる野左根選手が、決勝でなかなか中須賀選手に届かない理由は、ここ。ほんのちょっとの差が、決勝でのミスを呼んだり、勝負を急いでしまったりする要因になっています。……実際の操作としては本当にわずかな差ですが、大きな差でもあるんです。でも今後、野左根選手が意識的に体作りをしたり、今以上に闘志をギラギラと剥き出しにすれば、どんどん埋まっていくものと思います。

若くしてファクトリーを背負う野左根に期待すること

24歳という若さでメーカーの看板を背負う

僕自身の経験談ですが……。僕は全日本GP250クラス初年度の1997年からヤマハファクトリーライダーになったんですが、その時は先輩の芳賀健輔さんがいたんです。どこか支えてもらっていたし、ファクトリーライダーだということに純粋に喜んでいられた。ところが翌1998年には、同クラスのヤマハファクトリーライダーとしてはひとりきりに。この時のプレッシャーはハンパなかったですよ! 本当に切羽詰まりました(笑)。でも一方で、ようやくファクトリーライダーとしての自覚ができ、メーカーの看板を背負うんだ、という意識がしっかり持てたような気がします。野左根選手も、若いとはいえ24歳。中須賀選手という壁はありますが、だからこそ自分で自分を追い込んで、真の実力を発揮してほしいですね。

進化し続けるYZF-R1をどう乗りこなせばいいか

強い気持ちで新型マシンを乗りこなせるか

量産車では、5年ぶりのモデルチェンジとなるYZF-R1。開発者にはMotoGP™経験者がおり、MotoGP™直系の技術もふんだんに盛り込まれていると聞きました。最大のライバルであるホンダCBR1000RR-Rは見た目も中身もガラリと変わるフルモデルチェンジで、もちろん相当に手強い相手です。でもR1は、変えるべき点を変えつつ、長所は残している。何しろ中須賀選手との組み合わせでタイトルを獲りまくっている実績がありますから、マシンの良さは疑う余地がありません。良いマシンをいかに操り、戦績につなげるかは、ライダーの気持ち次第。野左根選手はMotoGP™テストに参加するなどして、世界のレベルを目の当たりにし、世界の速さを肌で感じています。その経験を生かしながら、秘めた情熱をより速くなったR1にぶつければ、さらにステップアップできるはずです。

もてぎ大会、ズバリ野左根が勝つには

トップチェッカーを再び

ツインリンクもてぎは、ブレーキングの得手・不得手が勝敗に直結するコースです。ブレーキング巧者の中須賀選手に打ち克つのは、並大抵のことではありません。中須賀選手はブレーキングのみならず、コーナリングも加速も上手で、死角のないライダーだからです。でも、勝とうとする相手と同じ走りをしていたら、決してそこには届きません。強大なライバルに対して、野左根選手が自分だけの強さを磨き上げることができれば、十分に勝機はあると思います。中須賀選手は全日本トップの座に君臨し続ける偉大なライダーです。でも、若く勢いのあるライダーの活躍も見たい。野左根選手には、同世代の水野選手と切磋琢磨して中須賀選手を倒し、日本のレース界をリードしてほしいと思っています。

コラム:中野真矢氏
1977年、東京都生まれ・千葉県出身。
2001年から2008年まで世界最高峰のMotoGP™(2001年はGP500クラス)に参戦し、2009年に惜しまれながらロードレースを引退。
その後はファッションブランド「56design」を立ち上げるなど、ロードレース、モーターサイクル業界の振興に尽力している。

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※使用している写真・イラストはイメージです。

 

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